人間の体は環境に応じて変化するようにできています。
寒い時期は身体の熱を外に逃がすまいと、脈が「キュッ」と細くしまっています。
抽象的な表現で申し訳ありませんが…脈診(みゃくしん:指で患者の脈を診る東洋医療による行為)を言葉にすると、私の拙い表現ではこのようになってしまいます…脈がやや細く内に入っていて、体温を守っているイメージでしょうか。
血管が体表面に近く広がっていれば温かい血液の熱を体の外へ逃すことができますが、細く内に入っている状態ですと熱がこもりやすくなり熱中症の危険が高まりやすいと言えます。
本来徐々に暑くなってゆっくりと身体が切り替わっていくのですが、最近の気候は温度変化が激しく、それにより自律神経が乱れていたり、高齢になってきて身体の反応が悪くなってしまったり、身体が切り替わっていないのに急激に暑くなったりと身体も対応に困ってしまうことが多いように感じます。
なので、急に暑い日がやってきても上手に汗をかくことができず、熱を発散しにくい身体になっているのです。
夏の暑さに向けて身体を慣れさせることを「暑熱順化」といいます。
積極的に汗をかき汗腺を目覚めさせ、身体を夏仕様に持ってゆく行為です。
温めの湯舟につかるなども推奨されています。
暑さに順応した身体づくりには少し時間がかかりますので、本格的な夏に向けて2週間くらいを目安に始められるとよろしいかと思います。
暑熱順化により汗だくになるのではなくじんわりと汗がかけるようになると、余分に水分が放出されすぎず体温を下げるためにも理想的です。
この体温を下げるための発汗機能をONにしていないまま夏を迎えると、熱中症のリスクが高くなります。
テレワークで外出する機会が減った方や、産後で赤ちゃんと家で過ごす時間が長い方、身体に痛みがあり積極的に歩くことができない方などは、「暑熱順化」し辛いのではないかと思います。そういう方には、鍼灸はいかがでしょうか。
鍼灸師は脈を見ながら、(冒頭に書いた)「キュッ」としまった脈を、ツボに鍼をしたりお灸をすることで、脈を広げて汗をかきやすい夏用の脈に調整します。また自律神経も整いやすいです。
ここ数年、猛暑、酷暑と呼ばれる過酷な暑さが印象に残っています。
しっかりと「暑熱順化」をして、暑い夏を元気に乗り切る準備をしましょう!